武士道解題

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買ってから読み終わるまで随分とかかってしまったが、非常に面白かった。

内容は二部構成をとっており、李登輝が自分の半生とからめながら、新渡戸稲造との出会いを語るのが第一部で、「武士道」の本文+著者による解説が第二部。あてにしていたのはもちろん第二部のほうなのだけど、自分自身が李登輝についてそれほど知らなかったこともあって、まず第一部がとても興味深かった。戦前の日本の教育がどのようなものであったかを、実際の当事者が語っているので、とても説得力がある。

第二部は、解説でいろいろな具体例を引きながら、新渡戸稲造の意図するところを噛み砕いて説明してくれるので、非常にわかりやすかった。ただし、この解説中に出てくる例において、日本についてはポジティブな表現ばかりで、中国(中華人民共和国)についてはネガティブな表現ばかり、というのが少し気になった。戦前の日本の価値観を、短絡的な全否定ではなく、良いものはよく、悪いものは悪い、と、改めて再評価するべきだ、というのは、この本のテーマのひとつで、「武士道」についてポジティブな表現が目立つのは当然だと思うが、戦前の日本や、現代の歴史問題などについても、「良いものは良い」という主張のみが目立ち、欠点の指摘が欠けているように思う。これでは逆に、「戦前の日本の価値観の全肯定」と曲解されかねない。また、過去の中国の行動についての批判は多くみられたけれども、今後、中国と台湾との相互理解のために何をするべきか、という建設的な意見がほとんど見られず、中国側をけなしっぱなしで何のフォローもなかったのは残念だった。

少し話がそれたけれども、平民から隔離された「選ばれし者」である武士として、忠、孝、義、を理解し、それらを実践することが求められ、事実、それらが行われていたことは、日本人として誇ってよいことだと思う。現代においては受け入れがたい箇所はもちろんあるけれども、変わらない部分は、しっかりと自分でも実践するべき。けっぱれ、俺。