沈黙

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あまりに面白かったので、思わずWebで関連情報を探してみた。

最も読み応えがあった、大学の読解授業のレポート
http://theology.doshisha.ac.jp:8008/kkohara/reportdb.nsf/0/3b9f3d4c44a442d049256cda0047d5a4?OpenDocument&Click=

高校の授業で「沈黙」を扱う場合のねらい。高校生が、どういう感想を持つかが分かって面白い。
http://www5d.biglobe.ne.jp/~platz/tinmoku.htm

一番知りたかったのは、巻末の切支丹屋敷役人日記の内容なのだけど、全訳のようなものが見つからなかった。こちらの書評に、概略があるのみ。
http://megupyon.fc2web.com/enndou5.html

あと、自分自身が印象に残った箇所をいくつか。

ヨーロッパにいる澳門の上司たちよ。その連中に向って彼は闇のなかで抗弁をする。あなたたちは平穏無事な場所、迫害と拷問との嵐が吹きすさばぬ場所でぬくぬくと生き、布教している。あなたたちは彼岸にいるから、立派な聖職者として尊敬される。烈しい戦場に兵士を送り、幕舎で火にあたっている将軍たち。その将軍たちが捕虜になった兵士をどうして責めることができよう。(p.272)

作品の冒頭で語られるフェレイラの状況はまさにそれであり、「日本の教区長であるフェレイラが、弾圧によって棄教した。」とだけ聞けば、それは許されることではないと誰もが思ってしまう。そうやって、現代に至るまで「棄教した」という一面だけをとらえられ、いかなる葛藤の末に基督を愛したまま踏み絵を踏まなくてはいけなかったという苦しみがほとんど語られていないことに対する怒りも感じられる。

「強い者も弱い者もないのだ。強い者より弱い者が苦しまなかったと誰が断言できよう。」(p.294)

ずっと苦しみばかり見せられていただけに、棄教せざるをえなかった弱い者たちを救う言葉は、読んでいる自分もほっとした気分にさせられた。

弱い自分でも良いのね。