ローマ人の物語 (6) ― 勝者の混迷(上) 新潮文庫

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膨張したローマが、内乱にさいなまれるのがこの巻。

ポエニ戦争までは、いいとこだらけだったローマの政体だが、私有農園という既得権を手放すことを要求したグラックス兄弟の改革に、元老院階級が強く反発。最終的にグラックス兄弟を死に追いやる。また、ローマ同盟国がローマ市民権を求めるも、ローマはそれに応じず、結局彼らの武装蜂起を引き起こした後に認めるはめに。

護民官グラックス兄弟の要求に対して、武力ないし謀略で対応した元老院の対応は、これまでになく陰湿。同盟国との内乱についても、利己的な感がいなめない。「勝者の混迷」とはよく言ったもので、共和制ローマの政体がほころびはじめる。

それにしても、素朴な疑問として、元老院階級だったら、すぐに生活に困るようなことにはならないだろうに、なぜに自分の財産が削られることに対する反発はいつの世も同じなのかと。